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僕が君と出会う10分前

捨てられた。

男はみんな嘘吐きばっか。
勝手な綺麗事ばかりを並べて、自分は絶対悪者になろうとしない。
「ごめんね、僕が至らなくて」なんて言ったって、心の中にはそんな気持ち微塵もないのよ。
だってホントに至らないと思ってるなら、至るように努力したら良いじゃない。
この世の中努力が報われない方が珍しいってくらいに、案外ある程度のところまでは結果が伴うものなんでしょ。ましてあたしみたいな馬鹿女が相手なんだから、「運動不足解消のために毎朝ジョギングする」なんてくだらない目標を立てて努力するよりも、ずっとずっと簡単なことだと思うんだけど。
仕舞いには「君はココにいると幸せになれない」とか言っちゃって。勝手に決めつけないでほしいわ。幸せになれないのはそっちでしょ。

空を見上げると夕日が眩しく目に刺さり、思わず涙がこぼれそうになる。

そう。あたしといると彼は幸せになれなかったんだ。

一緒に住むようになって2年。あたし、ずっといい子にしてたのにな。
ちゃんと彼の言うこと聞いたし。時々我が侭も言ったけど、そんなの可愛いもんだったはず。
彼の帰りが遅くても寝ないで待ってたし。帰って来れば一目散に玄関でおかえりって迎えたし。
休日は疲れて出かけない彼に付き合ったし。彼の愚痴だって辛抱強く聞いたし。

それでも、彼はあたしのことが面倒になったんだ。

いつからかな。いつから鬱陶しいと思われてたのかな。

彼の仕事が落ち着いて、久々にのんびりできたあの休日は?まだ笑顔であたしと笑って話してた。
あたしが帰らなかった夜?でも心配して朝まで起きて待っててくれたし、あたしが帰れば叱ってくれた。
彼が酔い潰れて帰ってきたあの日は?あたしがついつい彼が帰ってくる前に寝てしまったあの日は?彼のボーナスが出てちょっと豪華な夕飯を食べたあの日は?
考えればきりがない。でも次々に思い出すのは、あたしと鼻を擦り合せる優しい笑顔と、あたしの頭を包む暖かい大きな手と、耳をピッタリくっつけると心臓の音が聞こえる広い胸と、何よりあたしの名前を呼ぶ低い声。一緒に寝ていた匂いや、ふざけて突っついた頬の感触や、とにかく身体中の感覚がまだ鮮明に彼を記憶していて、身震いする。

どうしろっていうのよ。

日はすっかり沈んで、あたりが暗くなった分、夜風が冷たくて、頬を涙が伝っているのが嫌でも分かる。
駅からは電車が来る度にたくさんの人が現れ、自分の家へと足早に向かい、誰もあたしに目もくれない。

男はみんな嘘吐きばっか。に違いない。
好きだとか、ずっと一緒だとか、俺より先に死ぬなとか、あたしをその気にさせるだけさせておいて、結局ポイだもん。

肌寒さと、忘れたくても頭に浮かぶ彼の思い出に震えながら、あたしはしっぽを身体に引き寄せ、耳を倒して丸くなった。
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by mowmowmocha | 2011-03-31 01:17 | 木曜日
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